2016年3月11日、東日本大震災発生から5年を迎えました。多くの尊い命が失われたことを改めて思い起こし、心より哀悼の意を表します。また、今なお避難生活を強いられている皆さま、仮設住宅で暮らしておられる皆さまをはじめ、すべての被災された皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。
3月11日は全国各地で追悼式が開かれましたが、滋賀教会でも多くの会員さんと共に、東日本大震災犠牲者慰霊並びに復興祈願供養をさせていただきました。
震災から5年を迎える前日の3月10日、私は東日本大震災についてのある番組を見ておりました。被災地のある小高い場所に、白い電話ボックスがあり電話線がつながっていない黒電話、「風の電話」が設置されていました。「風の電話」は大切な人を失った遺族が亡くなった人と会話するために、そしてその想いが亡くなった方へ風に乗って伝わるようにと震災の前年に設置された電話でした。震災後、家族を亡くされた遺族の方がその場所を訪れ、「風の電話」で話をされている様子が映し出されました。
その中で、父親を亡くされたご家族の方が話しをしている様子が心に残りました。初めてその地を訪れた家族が、「風の電話」を通して父親に話かけていました。3人のお子さんのうち、震災後、父親についてほとんど話さなかった娘さんが泣きながら電話で話した最初の言葉「お父さん、ごめんなさい」が印象的でした。彼女は、震災前に父親に対して、つい言ってしまったことを後悔し、5年も心の中に留めていたのです。父親に「風の電話」を通して謝った後、少しずつ日常生活のことを話し始めたのです。
私にも3人の子どもがいます。愛する妻と、子どもたちを残して亡くなった方の想いと、残されたご家族の想いを考えると、その様子を見ていて、涙がこみ上げてきました。また、彼女の姿から、私自身、家族や大切な人たちについ言ってしまったことで気まずい思いをしたまま、あるいは喧嘩したままでいることはないかと自分を振り返り反省しました。
3月号の佼成の会長先生のご法話は「悪いことはしない」です。その中で、悪いことをしないのは悔いのない日々を送るためと教えていただいています。私たちは毎日、充実した生き方をするために、後悔しない生き方、目の前の人との出会いを大事にすることを教えていただいておりますが、私はこのことを皆さまから深く教えていただいたように思います。
まだまだ復興が進まず、困難な生活をされている方、そして家族を亡くされた遺族の方々に対して、私たちができることは精一杯させていただきたいと思います。滋賀教会では、毎月11日に水やお茶だけでなく、手作りのおにぎりや温かいお味噌汁、お酒やお菓子などを供えてご供養をしています。それは震災当時、大変寒い中で被災された方々が、温かいものを食べたかっただろうという思いと、少しでも亡くなられた方々に対しての慰霊と震災のことを忘れないということで続けています。これからも、真心のお供えをして、慰霊と復興のご供養を続けていきたいと思います。
あらためまして、亡くなられた方々のご冥福と被災された方々の心の安寧と復興が早く進むことを祈念させていただきます。 合掌
滋賀教会教会長 後藤益巳